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MIKAN

  • 執筆者の写真: notajournaljapan
    notajournaljapan
  • 4月20日
  • 読了時間: 3分

更新日:4月26日

蜜柑


短編物語


大山、鳥取県での記憶から、


Francisco de Goya - Vuelo de brujas (1798)
Francisco de Goya - Vuelo de brujas (1798)


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黒の奥にある黒ってなんだろう。


そんな事を思いながら流れる木々を目で追いかける。


ヘッドライトは黒に吸い込まれ、車の影はその場に置いていかれている。 



「ついたよ。」



その言葉で車の中にいるのは自分だけではないという事に気がつく。


到着した家は以前から噂に聞いていた魔女が住むという家。


四方には背の高い木が生い茂り、その奥には開けた田畑がみえる。


そして家全体を覆い隠すような巨大な山を背にその家は佇んでいた。 


丁寧に手入れされた玄関を抜けると、内壁一面に絵が描かれた広い居間と、いくつかの小部屋。


元々あったであろう壁を抜き、大きな一枚の木の机と本が詰まった棚。


誰かの気配と、暖かな匂いがする。


煙草を吸おうと庭に出ると、蜜柑が詰まった袋が無造作に置かれている。


いくつかの蜜柑は床に転がり落ち、足元で上を向いている。


何気なしに中を覗くと、その塊の右側の端一面が薄いふわふわの⻩緑色に覆われていて少しギョッとする。


ぼんやり煙をくゆらしながら、自分がまたどこにいるのかわからなくなる。


今夜は風が強い。


ゴウゴウという音と共に、風に舞う葉が頭や頬にぶつかる。


二階の端から聞こえるあの甲高い音は本当に風の仕業なのだろうか。 



「実はさ、昔働いていたんだ。大きな企業で朝も夜もなかったもんだよ。」



丸餅を焼きながらゆっくりと手帳を開く。


そういえば、故郷の旧友が近いうちにこの家に来るはずだ。


数日前から連絡はあるものの、隣町に居ついてしまいこの家になかなか足を踏み入れない。


隣町には世界でも有数の療養地があるそうだ。


なんでも三日目の朝をその場で迎えればどんな病でも治るという。


そんな話を真に受けて⻑居する友人を明日にでも呼び寄せようか。 



「ひとつひとつ書き出すんだ。あれはあれ、これはこれ、ってね。そしたら整理できるんだけど、じゃあこの混乱はいったい何なんだってね。」



山はずっとそこにある。じわり、じわりとわたしに寄ってくる。


山と私とこの家がひとつのおおきな塊のような。


はやく車を走らせて、山を越えて、迎えにいかないと。 



「魔女はさ、目に見えないんだ。でもたしかにいるんだよ。君には見えないのかい?」 



「目に見えるものなんて、ニンゲンの目線の上での物語だよ。そんなの飛び越えて地上と霊界の狭間に漂うのは、なんて気持ちがいいんだ。」



頭を横にぶんぶんと振る。私は違うと手のひらで耳を塞ぐ。


優しい眼差しと柔らかな毛布。


風は変わらず強く、ゴウゴウと葉は屋根を大きく叩く。


故郷の手土産にと友人が持ってきたこの丸餅は、じんわりと焦げて煙がでている。


知っているだろうか。


庭には蜜柑の木がある。


ひとつ、


ふたつ、


地面に体が横たわる。


つみあげた塊を覆う薄い緑は、今夜も侵食を続けているようだ。 



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もし、わたしたちの旅が、少しでもあなたの心に触れたなら、

何か一緒に面白いことができるかもしれない。是非、連絡してください


instagram @notagournal.jp


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Written by Tama (NOTA)



 
 
 

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